2020-02-26

イスラエルとパレスチナの壁【パレスチナ・ヘブロン】





2019年3月。パレスチナ自治区の中で、
封鎖が続き観光客は立ち入ることのできないガザ地区を除いて、
今一番イスラエルとの状況が緊迫しているヘブロンという街へ。





ヘブロンには、イブラヒムモスク(アブラハムモスク/マクペラの洞穴)という、
ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の祖であるイブラヒムや
その家族の墓がある場所があり、3つの宗教の大事な聖地となっている。


そのモスクは今、半分はイスラム教のモスクとして、
もう半分はユダヤ教のシナゴークとして使われている。


この重要な聖地がきっかけとなり、
約20万のパレスチナ人の住むヘブロンに、500名のユダヤ人入植者、
そしてその入植者を守るために4000人のイスラエル兵がいると聞いた。


93年、オスロ合意によって、パレスチナ自治区は
ABCという3つのエリアに分けられることになった。
エリアA:パレスチナの支配地域
エリアB:パレスチナとイスラエルの共同管理地域
エリアC:ヨルダン川西岸地区にあるイスラエル支配地域
けれどエリアAは実際にはパレスチナ自治区の18%ほどの地域に過ぎず
大半の地域をイスラエル軍が治安維持に当たっている。


どんどん入植地を広げてゆくイスラエル。
それに抵抗するパレスチナのデモ隊とイスラエル兵との衝突は、
ヘブロンで今年に入ってからも起きている。


宿のスタッフから英語で説明してもらったので、
ちょっと曖昧ではあるけれど、私の解釈だと、
どうやらヘブロンは、エリアABCの区分とは別に、
H1(=パレスチナが管理)
H2(イスラエルの支配下)で エリア分けされているようだった。


泊まることにしたH2ホステルは、旧市街に近く、
パレスチナの管理下であるH1のエリアにある宿だった。
「この宿の名前はH2だけど、このエリアはH1なんだよ。
おかしいだろ」と宿のスタッフが笑いながら言っていた。


宿に荷物を置いて、商店街を通り旧市街を歩く。




私はベツレヘムの宿で会った、
アメリカ、ノルウェー、オーストラリアの3人の旅人とともに
ヘブロンの街を回っていた。
この町で出会ったパレスチナ人は、みんな私たち旅行者に優しくしてくれました。
“Welcome to Hebron”とあちこちから声をかけていただいたし、
街中でちょっとした道案内をしてくれたりヘブロンの様子を教えてくれた。




この商店街ではどうやら一階にはパレスチナ人、
上階にはユダヤ人入植者が住んでいるらしく、
入植者たちが上から石やゴミを捨ててくるので、
網を張ってそれを防いでいるらしい。




商店街から一歩路地へ入ると、
捨てられたゴミでいっぱいになり、有刺鉄線が張り巡らされ、
出入りできなくなってしまっている家もあった。




商店街を抜けると、建物の雰囲気が変わる。




この場所で、子どもたちにお菓子を配っていた優しそうなおじちゃん。
私たちにも飴を分けてくれた。




先へすすむと、パレスチナの民族衣装や伝統工芸品を扱った
お土産やさんが立ち並んでいる。




旧市街も多くはイスラエルの支配下にあり、
壁で塞がれてしまった場所も。




趣のある旧市街の商店街。




でもやっぱり、天井の網が気になる。




ずっと先へ進むと、チェックポイントが。
イスラエル兵にパスポートを見せて、
イブラヒムモスクの入り口まで来れた。




まずはパレスチナ側のモスクへ。
預言者たちが眠るとされ、イブラヒムの墓もある。
外国から訪れたムスリムもいて、
涙を流してイブラヒムの墓を見つめている人もいた。






ちょうど礼拝時刻になり、お祈りを始める女性たち。





一度外へ出て、反対側へとまわりこむ。こちらはイスラエル側。




チェックポストをクリアし(観光客なので入れた)




イスラエル側のシナゴークへ。
ヘブライ語の本がたくさん並んでいる。





キッパという小さな帽子を頭に乗せて、祈るユダヤの人々。



H2エリアであるシナゴーク周辺には、イスラエル兵がたくさん。



いたるところに、兵士さん。
写真は撮れてないけど、
兵士ではないユダヤ人の入植者も、
銃を持って街を歩いていたりする。



「ゴーストタウン」と呼ばれる、人気のない古い商店街の跡。
昔はパレスチナの商人たちがたくさんいて活気のある商店街だったようだけど
今ではイスラエルの管理下に置かれてしまっているので、
このエリアで見かける人といえばほとんどイスラエル兵だけだった。



あちこちに並ぶ、イスラエル国旗。
気味が悪いほど、全然人が歩いていない。




ゴーストタウンを抜け、チェックポストへ。
警備するイスラエル兵にパスポートを見せて、
私たちは簡単に出入りできるけど、
パレスチナの人々はそうもいかない。

鉄格子の物々しいチェックポストを抜けてパレスチナの管理するH1へ。


ふりかえってこの鉄格子の壁をみたときに、
またしてもどうしようもなく大きな違和感が心に広がった。


これでは、檻の中に閉じ込められているみたいだ。


“天井のない監獄”
ここにくる前に読んだガザに関する本に書かれていた言葉。
ヘブロンだって、実態はおんなじだ。





ごちゃごちゃと活気のあるヘブロン新市街へ戻ってきた。

観光客としてのんきにふらっとやってきちゃったけど、
ヘブロンの人たちはどう思っているのだろう・・・


でもそんな心配はよそに、
みんな目があうと優しく微笑んでくれる。








ヘブロンで起きていること、パレスチナのことを、
世界中のみんなに伝えて欲しい、と多くの人が言ってた。


きっとイスラエル兵も、外国人の観光客が多ければ、
外部の目が気になりパレスチナ人に対して乱暴なこともしづらくなる。


ニュースだけでは見えてこない、
イスラエルやパレスチナの本当の姿を知るために、
自らが抑止力となっていくためにも。






H2ホステルでいただいた、パレスチナな朝食◎
ひよこ豆のファラフェルを、ホブスやハーブやオリーブオイルにつけて。
フレッシュトマトも美味だった。


***

【ベツレヘムからヘブロンへの行き方】
maps.meで“Bus&Service to Hebronと検索。
その周辺を歩いていると小さなバスストップがあり
「ヘブロン、ヘブロン」とバス運転手に呼び止められた。
乗り合いのローカルバスに乗車し、30分でヘブロンへ。
ガソリンスタンドのすぐ近くで下車。(9.5シェケル)

【ヘブロンで泊まった宿】
■H2ホステル
エリアH1にある宿だけど、なぜか名前は“H2”
ガソリンスタンドの道挟んだ反対側の大きな建物内4Fにある。
女性用ドミあり、キッチンあり、Wifi速度はまぁまぁ。
朝食付きで確か50シェケルくらいだった気がする。
オールドタウンに近くてヘブロンの中心地にある宿なので便利。
スタッフも優しくフレンドリーだった。ツアーもやってるらしい。

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