深い雪で覆われる冬をのぞいて、
おおよそフンザの魅力的な3つの季節を訪れることが叶った。
谷全体がやさしい桃色に染まる春、緑が青々と茂る、実り多き夏、
そして、ポプラの木々が黄金色に輝く秋。
どれも私の好きなフンザの顔であることに変わりはない。
けれど中でも10月下旬のフンザは、
晴天率が高い時期であり、紅葉と青空のコントラストがとても美しい。
もっともおすすめしたい季節、かもしれない。
フンザの谷を見下ろせるおすすめの場所はいくつかあるが
私のお気に入りは、バルティットフォートからの眺め。
この写真も、バルティットフォートの外壁あたりから撮影したものだ。
バルティットフォートへは、カリマバードの中心部にあるバザールの、
バルティット村との分かれ道を上方にしばらく登って行くと辿り着く。
途中、こぢんまりとした土産物屋が並んでおり、
寄り道をしたり、店主と話しをしたりするのも楽しさの一つ。
この日も、道草をしながらのんびりと坂を登っていた。
しばらく登ったところで通りかかったお土産屋の前には、
ちょこんとあぐらをかいて座り刺繍にいそしむおばあちゃん。
そしてお隣にいるのは、お孫さんだろうか。
人の良さそうな、感じのいい青年。
可愛らしいおばあちゃんと、和やかな雰囲気で話をしている。
ふたりのオーラがあんまりすてきだったものだから
思わず足を止めて「アッサラームアレイコム」と挨拶をした。
一面に伝統模様の刺繍が施されたフンザ帽子に
真っ白の大きなドゥパッタをまとっているおばあちゃん。
フンザの女性の民族衣装だ。
若い女性では、こういう格好をしている人はめっきりと少ないけれど。
女性は写真を撮られることを好まない人も多い。
けれどそのおばあちゃんの姿があんまり可愛くて、
“撮ってもいいですか?”
とカメラを指差してアイコンタクト。
すると、こんなに素敵な微笑みで返してくれた。
あぁもう、素敵。
人の仕草や表情には、本当によく
人と柄やこれまで生きてきた人生が反映されている、気がする。
:
この国を旅していると、「あぁ、この人の表情、良いなぁ。」
という瞬間に、たくさん出会う。
そんな表情に出会う度に、私はとても嬉しくなってしまう。
そして満面の笑顔と最大限の偏愛を向けて、
「あなたの表情が好き」「あなたは本当に美しい」
という思いを込めて、写真を撮らせていただいている。
撮った写真をその場で見せて、笑顔になってくれたらさらに嬉しい。
写真がきっかけで始まった出会いは、数え切れないほどある。
私にとって、異文化を旅する上で、
写真はコミュニケーションの一つであり、
決して忘れたくない、大切な思い出のひとつだ。
今日もあのおばあちゃんは、元気にしているかな。
あの場所にすわって、孫と笑いあっているのだろうか。
2018年10月 旅の記録
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