2019-08-28

秘境、パンダール【パキスタン】






天気の変わりやすい山岳地帯にしては、
秋の北部パキスタンは、晴天率が高い。


この日の空も快晴。
降り注ぐ太陽の眩しい光が、肌につきささる。
澄み切った空気を吸い込み、肺が浄化されてゆく。
冷たい風が頬にあたり、なんとも清々しい。


森林限界をゆうに超えた山々の、
地球の風貌を感じさせる茶色のゴツゴツした岩肌が
すぐ目の前にまでせまっている。
山のてっぺんには、雪がうっすらとかかっている。


10月の中旬。ポプラの木々が、黄金色に身を染めてゆく。
村の中心には、エメラルドグリーン色の透き通った川が流れる。
村人は、農作業のピークを終えて一息つき、
長い冬に向けて黙々と支度をする。


穏やかな、秋のパンダール村。




ここに暮らすのは、イスラム教イスマイリー派の人々。
話されていることばは、チトラールの言語であるコワール語。
このことばは、流れるような美しい響きのある言語で、
耳に心地よさを感じるので、とても好み。
コワール語圏外を旅しているときでも、
どこからかこの独特の響きを持つ会話が聞こえてくるとすぐに
「チトラールの方の人たちかな」とわかるしなんだか嬉しくなる。








村を端から端まで巡ってみようとのんびり歩いていると、
通りすがりの村人が、すぐ近くに親戚の家があるからと、
民家へと案内し、親戚一同に私のことを紹介してくれた。


ここで塩味のチャイと、味のないパンと、不思議な味のするヤクのチーズを頂く。
美味しいかどうかはともかく、食べ物はどれも質素で、優しい味がした。
しかし、チャイのおかわり三昧には参った。
塩味のチャイは正直、得意ではない。
だから、なるべく味がわからないように、息を止めて一気飲みをする。
あぁなんとか飲みきった、と思ってホッとしていると、
彼らは、空いたコップに次々と新たな塩味のチャイを注いでくるのだ。
飲めども飲めども終わらない、底なし沼のよう。






パキスタンの田舎を歩いていると、それはもう数十メートルごとに、
誰かに会う→家に招待されチャイやご飯をご馳走していただく
ということの繰り返し。

一人旅であっても孤独を感じる隙はなく、空腹に喘ぐこともない。
その日の寝床や食べ物を、必死になって探さなくても、人々が与えてくれる。
何もひとりで頑張ろうとしなくても、必ず誰かが手を挿しべてくれる。
自分で努力しなくても、世話焼きで人情に溢れた人たちが、なんとかしてくれる。
人々のやさしさに、甘えてばかりいる。

おかげで、計画性がなくいつも行き当たりばったりな私でも、なんとかなっている。
こんなにも旅することが易しい国、なかなかないと思う。









空の青と雲の白が湖面に映し出されている。
似たような風景、どこかで見たような気がする。
どこだったかな、と考えながら歩いていたのだけど
川に架けられた橋を見て思い出した。





そうだ、上高地!

どおりで。ここは懐かしい感じのする場所だと思った。











2018年10月 旅の記録





***



【パンダールへの行き方】※2018年10月

★ギルギットから
 ギルギットのナトコオフィスより、マスツージ行きの大型バスに乗り、パンダールで途中下車(約6時間 / 料金不明)

★チトラールから
 ①チトラールのバススタンドからミニバスに乗りマスツージへ(約5時間 / 500ルピー)
 ②マスツージで一泊
 ③早朝ナトコオフィス前でガクーチ行きの大型バスに乗り、パンダールで途中下車(約6時間 / 530ルピー)
 


【パンダールの宿】

Sada Bahar River View Hotel  ※2018年10月



■場所:村の中心部
■料金:Rs1000
■設備:ホットウォーター(時間制限あり)、レストラン

・部屋の中が極寒だった。暑い時期なら良いと思う。
・パンダールは外にレストランはないし屋台もない。
 宿か民家で食べる以外に選択肢がなかった。料理は普通に美味しかった。
・ホットウォーターは朝のみ、共用のタンクのお湯が使えた。

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