2019-04-08

夢のボロギール、

「夏のボロギール」 − PAMIR TIMESより引用















ずっと、この景色を見たかった。


ボロギールを、夢見ていた。






4度目となった、パキスタン渡航。


今回の訪問には2つの目的があって、
そのひとつが、ボロギールへ行くことだった。



ボロギールは、チトラール地方の最北部、
つまり、パキスタンの最北にある谷。


憧れの、アフガニスタンのワハーン回廊。
その中心地であるサルハドに、とても近い。
(ボロギール峠を越えてサルハドへは1日あれば行けるようだけれど、
現在外国人がこのルートでアフガニスタンへ渡ることは、
たとえビザを持っていたとしても難しいだろう。)
ワハーン回廊に行くことが難しい今現在、
一番それに近い暮らしを見れる場所が、ボロギールではないかと思う。



ボロギールには、約250のワヒ族と、1つのキルギス族の家族が暮らしている。
昔、アフガニスタンのワハーンから移り住んで来た人々の末裔だ。



標高3000mをゆうに超えるボロギール。
夏は短く、冬は長い。深く、冷たい雪で、覆われる。
電気はない。ネットや電話も通じない。水は、川から得る。
厳しい自然環境の中で自給自足をしながら、
伝統的生活で暮らす人々に、会ってみたかった。






2018年10月。


ボロギールでは、いつ雪が降ってもおかしくない時期だ。
夏まで待ってから行くほうがいいことは、わかっている。


でも。


心の底から行きたい場所ならば、
行きたいときに、行けるうちに行く。


様々なことを理由に二の足を踏んでいては、
一生行く機会を失ってしまうことだって、あるかもしれない。
ビザや許可証が必要な場所ならなおさら。


そんなことが、体験的に沁みついていた私は、
ベストシーズンなど待っていられなかった。
冬だから見れること、体験できることも沢山あるはず。






チトラールへ到着してすぐ、
外国人滞在登録を済ませるため、警察署へ。
以前もお世話になった登録スタッフのワカースは、
私の名前を覚えていてくれた。


さっそくボロギールに行きたいことを話すと
「今は寒いからやめた方がいい」と言われた。
寒いことは承知の上、準備をして来ていることを伝えると、
警察としては問題ないこと、
行くときは護衛を手配することを約束してくれた。



次に、ツーリストインフォメーションへ。
ボロギールへの移動手段や現地での滞在先の相談をさせてもらう。



そして、DCオフィスへ。
ボロギール行きのことを話すとやはり
「寒いからやめた方がいい」と言われたが、
オフィスの所長と面談。
ボロギールへ行きたい理由や、
手段や滞在先も準備があることを伝えると、OKしてくれた。


ただ最終的な判断はセキュリティエージェンシーになるということ、
NOCパーミッションをもらうために必要な書類を作成してくるように、
ということを言われた。


すぐにネットカフェに行き、
店員や護衛警察に手伝ってもらいながら書類を作成し、再びDCオフィスへ。



書類を受け取ってもらい、
1週間後に結果が出ると言われた。



一週間の間、チトラールの周辺の町や村を訪れた。
そして、再びDCオフィスを訪れる。



オフィスの担当者にNOCのことを聞いてみると、



なんと、




許・可・さ・れ・な・い・・




と・・・。







おそらく問題なく取得できるだろう、
と期待していただけに、ショック。


DCオフィスとしては、行かせてあげたかったけど、
セキュリティエージェンシーの許可が下りないのでダメ、とのことだった。



あとあと聞いてみると、
ACオフィスのほうが取りやすいだとか、
イスラマバードで申請したほうがいいとか、
他にも方法はいろいろあったようだけど、
もう不許可が出てしまっているのでどうしようもない。



そのあと、ボロギールの情報を教えてくれていた地元のファルハンや、
警察オフィスのワカースに、NOCを取得できなかったことを、報告にゆく。



二人とも、
行かせてあげられなくてごめんね、
次に来た時は、必ず行かせてあげるからね、
と。




しょんぼりと肩を落としていた私。





そんな様子を見かねたファルハンが、
「今日はこれからチトラールの小さな村を案内してあげる」
と、今まで行ったことのなかった外れにある村まで連れて行ってくれた。
ファルハンの家のある地区も散歩して、
家族や、親戚を紹介してくれた。
急な訪問にもかかわらず、
みんなチャイやドライフルーツ、パンなどで歓迎してくれる。




夕方には、ワカースが自宅に招いてくれた。
さまざまな果実の成った気持ちの良い庭でチャイやパンをいただく。
ワカースのお兄さんのお嫁さんが、
手作りの素敵な刺繍布をプレゼントしてくれた。



そのままワカースの親戚の家に移動すると、
私が来ることを聞いた家族が、すでに集まってご飯の用意をしていた。
私も、チャパティ作りのお手伝い。
薄く丸く伸ばすのが、なかなか難しい。




「チトラールのスペシャルフードだよ。
君のために特別に用意したんだよ。」

と豪華に振る舞われたお料理をお腹いっぱいいただいた。
その後、男性陣による、チトラールダンスの披露も。





護衛警察の規則もあり、自由に地元の人とふれあうことが難しいチトラール。
けれどこの日は警察オフィスのワカースの計らいで、
普段なかなか話す機会のないチトラールの女性や、
子どもたちともたくさん交流できてとても嬉しかった。





みんなの気持ちが嬉しくて、
ボロギールのことも、なんだかどうでもよくなった。




悲しい日が、みんなのおかげで幸せな日に変わる。







ボロギール。
行けるに越したことはなかったけれど、
行けなかったのにも何か理由があるはず。



トライしてみてダメだったのだから、
後悔はない。





本当に行くべき場所ならば、
いつか、一番良いタイミングで、
きっと行くことができると思う。







いつだって、
神様の御心のまま、、、










2018年10月 旅の記録より



***

【ボロギールに行きたい人へ】


ボロギールは、夏の間であればNOCを取得できる可能性が高いようです。

8月中旬〜後半にボロギールフェスティバルというものがあるので、
その時期であれば、外国人でもボロギールに行きやすいと思われます。



↓ワハーン回廊に関して書かれている書籍
禁断のアフガーニスターン・パミール紀行―ワハーン回廊の山・湖・人







ボロギールに住む、ワヒ族の家族。- Trophy Expeditionsより引用




0 件のコメント:

コメントを投稿