2018-06-27

パスーの素敵宿と名物おじいちゃん【パキスタン】


パスーで泊まったのは、「PASSU PEAK INN(パスーピークイン)」という宿。
村の中心地から、カラコルムハイウエイを1.5〜2kmくらい北上した場所にある。
このあたりは周りに建物がなく、少し先に進んだところに
ちょっと高そうなホテルと、「ミネコスクール」というパスーの子どもたちが通う学校があるのみ。




ちなみにこのミネコスクールは、日本人旅行者だったミネコさんが
もともとあった学校に資金援助して、1996年に新たに建てられた学校。
ミネコさんは亡くなられていますが、今も旦那さんが毎年訪問されているとのこと。
私の滞在中はちょうどテスト明けの休みにあたり、
テスト採点中の先生たちには会えたけれど授業の見学はできなかった。
カリマバードの長谷川スクールと同様、訪問はいつでもウエルカムのようです。







パスーピークインは、自然好きのんびり過ごしたい派の私には、
最高のロケーションだった。

パスーピークインからは北東に、
ツンツンとした峻険でクールな山々を間近に拝むことができる。
この山の名前はワヒ語で「トポップダン」と言い、
“太陽にいつも照らされている”という意味を持つ。
外国人ツーリストの間では「パスーカテドラル」とも呼ばれ、
パスーを象徴する山で、標高は6106mにもなる。
朝日や夕日に照らされるトポップダンは、もはや神々しい。




私がこの宿を訪れたのは、4月の頭。
このときまだ今シーズンの営業を開始しておらず
オーナーが壁のペイントなど、オープンの準備をしているところだった。
オープン前だけど既にドミトリーだけは準備が出来ていて
有難いことに一人でドミを使わせていただけることになった。





オーナーのアクバルは、超ハイテンション・マシンガントークの持ち主。
25年間勤め上げた元軍人で、明るく陽気で快活なおじいちゃん。
とっても綺麗好きで、宿は隅々まで掃除が行き届いていて綺麗。
パキスタンで今まで泊まった安宿の中でも一番清潔で整備もされている感じがした。
こういう土地柄やシーズン前ということもあり、
電気があまり来なかったりホットシャワーも不調だったりしたけれど、
それでもとても綺麗でリラックスして過ごせる居心地の良い宿だった。


宿の裏手にある広い庭には、杏をはじめとした沢山の果物の木や小さな畑があって
ヤギやウシなどの家畜も放牧されている。






家畜たちも木々も畑も、アクバルに大切に手入れをされているのがわかる。


ここの庭に腰掛けて、トポップダンを眺めてぼーっとしたり
昼寝をしてみたり、読書や日記を書いたり・・・
ネット環境も周囲に何にもないからこそ、
余計なことは何にも考えずに、静かにのんびり過ごせて本当に幸せな時間だった。


パスーピークインは切り立った岩山のすぐ東側にあり
夕方4時くらいにはもう陽が当たらなくなり、一気に冷え始める。
春先の季節ではあるけど、こうなるとありったけの服を着込んで
寝袋と毛布にくるまっていないと寒い。
電気が来ないとやることがないので、
夜は懐中電灯のある暖かいキッチンにお邪魔させてもらい
アクバルと二人で美味しいご飯をいただきながら、いろんな話をした。



アクバルの作ってくれる料理は野菜や豆が中心のカレーで、
どれもシンプルな味付けで油も少なくてとっても優しい味。
毎回チャパティとお米も一緒に、食べきれないよ〜ってくらい大量のご飯を出してくれた。
お水も、山から新鮮な水を引いているのでそのまま飲むこともできるしとっても美味しい。


長年軍人をしていたためアクバルは世界情勢にも詳しく、
世界やパキスタンで起きている様々な問題に対する自分の意見も話してくれた。
基本的に、こちらに話すスキを与えないほどのマシンガントークなので
政治や軍事の話になるとさらにヒートアップして圧倒されたけど・・笑
アクバルは、多くのパキスタン人もそうであるように、
典型的なアメリカ・インド嫌い。
そして、パキスタンジンダバード(万歳)!感が半端ない。
「世界のあらゆる問題や紛争はアメリカが手を引いている」
というのは全く同感だけど、
「パキスタンの軍事力はイスラムの国の中で最強。核もある。
イスラムの国で核を所有しているのはパキスタンだけ。パキスタンは偉大な国だ。」
と、核を全面的に肯定している発言には個人的に違和感があったし
「イスラムの国は世界で52、53ほどもある。
イスラムの国であるパキスタンにはこれだけの強力な仲間がいる。
それに対してヒンドゥーの国はインドだけ。たった一カ国だけで、何ができよう」
と、熱くなってくるとややイスラム以外の国に対して排他的な発言があったりと、
これまた個人的にはやや首を傾げたくなる場面もありましたが・・・
“宗教第一” “アメリカ嫌い” “インド嫌い”なパキスタン人にはあちこちで出会い
そのたびに同じような話を聞くことも多いので
これが多くのパキスタン人の意見なのかもしれません。


と、そんな一場面もあったけれど、
「アメリカやインドの話はやめよう。もっと楽しい話をしよう」
とこの時はアクバル自ら話を変えてくれたので助かった。
基本的には穏やかで気のいいおじいちゃんです。
ゲストブック兼情報ノートの書き込みを見ても、
私が見た限りではアクバルやこの宿のことを悪く言っているような書き込みは一つもなく
みんな好印象を持たれていて、快適に宿泊されていたようでした。


アクバルは元軍人なので、毎月4000ルピーの支給があるとのこと。
(確か20年くらい軍を務めた人は、辞めてから年金をもらえるようです)
畑や木々など自然からの恵みも多いこの場所で
毎月4000ルピーの支給は彼には十分すぎるほどだという。
アクバルは、
「私には家もあるし、奥さんがいて、子どもたちもみんなちゃんと仕事を持っている。
ツーリストが来てくれたら、それはアッラーからの贈り物だから本当に嬉しい。
でも来なければ来ないで、それでいいんだ。」
そんなことを言っていた。
彼は商売っ気もがめつさも全くなく、
私のこともまるで昔から友人だったかのように歓迎してくれた。
美味しい食事やチャイもたくさん用意してくれたのに
朝昼晩ぜんぶ含めてたったの一日Rs200ほどにしてくれた。


そんなこともあり気持ち的にも金銭的にも優しくて
「また泊まりたい」
と心の底から思わせてくれたステキ宿なのでした。






2018.4


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