2017-10-20

恐怖のアラコル湖トレッキング【キルギス】


アルティンアラシャンからアラコル湖へのトレッキングは、命がけだった。
こう言うと大げさかもしれないけれど、
ラストダンジョン的な最後の急な登山は、
私にとっては本当に恐怖のトレッキングだったのだ。








そもそも、アラコル湖へは元々行く気が無かったので
トレッキングに関する情報もほとんど持ち合わせていなかった。
それが前日に、どういうわけか行く気になってしまった。
そして、あいにく『やる』と決めたら誰になんと言われようが意思を曲げない頑固な性格の持ち主なので
『君一人で行くのは危ないよ』
『やめておいたら?』
という宿のおじちゃんや他のツーリストの意見を聞きつつも、それでもやはり私の気持ちは変わらなかった。

一年前は島で毎日山を登る生活をしていたし、もし道がわからなくなってもGPSがあるのでなんとかいけるはず・・!



アラコル湖を目指す欧米人トレッカーたちの間では、こんなルートが王道のようだ。
1日目 カラコル国立公園からアラコル湖手前のベースキャンプまで歩き、テント泊。
2日目 ベースキャンプからアラコル湖へ行き、そのままアルティンアラシャンへ。
3日目 アルティンアラシャンから下山し、カラコルの街へ戻る。
という2泊3日のトレッキングコース。


カラコルの宿で出会ったアントニオ、イアン、ラデックの3人もそのルートでアラコル湖を目指すと言っていた。
「一緒に行かない?」と誘ってもらっていたのだけど
私はテントも寝袋も登山グッズも何一つ持っていなかったし、何しろその時は自分がアラコル湖に行く気になるなんてこれっぽっちも思わなかったので、アルティンアラシャンのみを目指すつもりで、一人別のルートから行くことにしていたのだった。


アルティンアラシャンから寝袋もテントもない私がアラコル湖を目指す場合
必然的に日帰りで行って帰ってくるコースになる。
宿のお父さんによると「行き5時間、帰り4時間」とのことだったが、これはおそらく地元民の足でかかる時間。
前日同じルートで行ったという韓国人によると
「一日で1400mの高低差を一日で往復するハードなルートだから、行き7時間、帰り5時間はみておいた方がいい」とのこと。
距離にして約30km、朝から晩まで、丸一日や歩き詰めコースである。






前日の夜、アルティンアラシャンを歩いていたら
カラコルで同じ宿に泊まっていたロシア人のアレックスにばったり。
一緒に、アラコル湖まで歩いて行くことになった。







朝の7時にアルティンアラシャンの宿を出発。
勢いでアラコル湖行きを決めてしまったものの
いざ行くとなると
『本当に私にできるんだろうか』
と不安な気持ちが出てくる。


そんな気持ちとは裏腹に、空は雲ひとつなく、綺麗に晴れ渡っていた。
まだ薄暗い中、冷たく澄んだ空気をたっぷり吸い込みながら
アレックスと二人でトレッキングルートを進んでゆく。






トレッキングルートと言っても、きちんと整備されたわかりやすいルートがあるわけでもなく
人や馬が歩いたことで作られたであろう小さな小道を進んでゆく。






小道はいくつにも分かれていて、道は無数にある。
どの道を通ってもけっきょくはアラコル湖に続くようにはなっているようなのだけど
メインルートから逸れるとちょっと遠回りになったり、ゴツゴツの岩場を歩かなければならなくなったり。
これは、おそらくメインルートを外れてゴツゴツの岩場を歩いている図↓





最初のうちは天気が良くて、絶景の連続。
アラコル湖まで行かなくてもいいのでは?
とまで思うほどの素晴らしい景色を堪能。






歩き始めて4時間強。
これまでは歩きやすいイージーな坂道を地道に登ればよかったのだけど
ここに来て急に険しい山が立ちはだかる。
標高もだいぶ高くなって来ており、寒さも増して来る。
そして、一気に雲行きが怪しくなって来た。
GPSで確認してみると、どうやらこの奥の山を越えた所にアラコル湖がありそうな感じ。
しかしこの登山道、これまでの道とは全く違う。
傾斜角、やばくないか。。
そして、朝出発したときは雲ひとつなかった青空が
ここではもう一面雲で覆われてしまった。山の天気は変わりやすいのだ。





頂上へ続く道は2つあり、私はなだらかに見えた左側を選択。
実際行ってみると、傾斜角はそこまで問題ではなかったのだが・・
問題は、非常に滑りやすい砂利道。
ずるずる滑ってなかなか進まない・・
岩に捕まったりして這うようにしか進めない。
しかも、その岩も脆いので信頼しすぎると危ない。
というかこれ、一歩足を滑らせたら崖の下真っ逆さまだ。
恐怖で足がすくむような登山道だった。
左側を選択したのが間違いだったのかも。。。

登り始めて20分ほど。
ストックも持たずちゃんとした登山靴も履かず
気軽な気持ちできてしまったことをひどく後悔する。
だけど、アラコル湖はもう目の前(のはず)!
ここまで来て引き返すという選択肢はない。
『生きて帰れますように』
そう、何かに祈りつつ、ゆっくりゆっくりと登ってゆく。




そして・・・
・・・
山頂に到着!12時ぴったりだった。
お!?5時間でこれたぞ?意外にスムーズだったな。
そして、そこから拝むアラコル湖!
ついに辿り着いたんだ・・!
残念ながら天気は悪く、雪もぱらぱらと降っていました。




それでも苦労してたどり着いたこともあり、ついたときはわあーっと歓声をあげてしまった。

天気は悪いけど、湖はとても綺麗だった。

と同時に・・・寒い!寒すぎる!!
ここの標高は3900mと、富士山越え。この季節はもう真冬の長野並みの寒さ。
ただ富士山の時は高山病になったけど、今回はなんともなかった。
あまりの寒さと強風にやられ、たっぷり景色を堪能する間もなく
アレックスとパパッと写真だけ撮り満足したらすぐ下山。笑
頂上での滞在時間、わずか10分。
この景色を見るために、何時間も歩いてきたのに。笑



アラコル湖側からは、王道ルートから来る欧米人たち。





登りも大変だったけれど、一番怖かったのは下山。




写真では上手く伝わらないかもしれないけれど
下山時は、登りよりも傾斜がきついように感じる。
そして、砂利道なのですべるすべる。
下を見ると、足がすくむ。急な下山道。
前に歩いていた人たちはゆっくりゆっくり歩いて(滑って)下山していくんだけど
私にはそんな芸当は到底出来ず
しゃがんで(ほぼお尻をつきながら)ソリのように滑り降りていくスタイル。
手で漕がなくても、勝手に滑り降りて(落ちて)ゆく。
一歩間違えばコロコロと転がって行ってしまうような道。
だけど下山は、登りとは違う方の道を選択したので、
一歩足を滑らせたら一巻の終わり!
というスーパー危険な感じではなかったので、そのへんはまだマシだったけれど
“生きて帰れますように。。”とまた祈りつつ下山。
他の人の3倍くらいの時間をかけて、ゆっくりゆっくりと。
登りと同じくらい時間かかった。本当に恐怖でした。

そして、なんとかこの死の下山道を下り終え、
そこでアレックスが待っていてくれました。


無事に戻ってこれたことに感無量。
この時、登頂した時以上に嬉しさが込み上げてきた。
生きててよかった。。落っこちなくてよかった。。
アレックスと二人、
『お疲れさん、無事に戻ってこれてよかったね!
アラコル湖制覇したね!』
と、生きて無事に行って帰ってこれた喜びを分かち合った。


寒いので、そこから歩いて少し高度を下げてから昼食。
それからは、来た道をずーっと歩いてゆく。
帰りはひたすら下りなのでスムーズ。
でも、、歩けどあるけど辿りつかぬ。。
けど、アレックスと二人
『早く帰って温泉に入りたい』という一心で、頑張って歩き続ける。
疲れは溜まっているはずだけど、早く帰りたすぎて行きよりだいぶ足取りがスムーズだったような。笑





そして・・・
到着!アルティンアラシャン!
4時。思っていたよりも早く帰ってこれた。




大きな岩とそこに生えてる不思議な木とともに記念撮影!


そして、念願の温泉。。。
10時間歩いた後の温泉、至福の時でした。
10時間歩いたからこそ感じられた極上の時間でした。
死ぬ思いをして登ったアラコル湖だったけど
こうして終わって見ると、行けてよかったな、と思う。
往復30km、高低差1400mのトレッキングを日帰りでやり遂げたことで、自信もついた。




でも・・あのアラコル湖ラストの登下山は、
もう二度と経験しなくていいかな。笑







Y.
2017.09.14




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