2017-08-26

真夜中のドライブ【パキスタン】

ローカルバスの車内で流れていた、チトラール音楽。


夜の8時。
ローカルバスに乗り、ペシャワールを出発。

チトラールまでは、途中悪路の続くロワライ峠(3720m)を超えて
約12〜13時間のハードな移動となる。





じつは私、パキスタンにくる前から
慢性胃炎・逆流性食道炎のために常に胃のあたりの不調を感じていた。
とても、旅に出るべき状態ではないなと思いながらも日本を出発。
旅では移動も多くなり体力も使う。

こんな状態で、果たして私は
未舗装の山道を越えてゆく
ローカルバス12時間の移動に耐えることができるのだろうか。

不安でいっぱいだった。

でも、なんとしてでも辿り着きたい。
吐いてでもなんでも行きたいと思った。


朝から消化のいいフルーツのみを軽く食べて
常備の胃薬に酔い止め、吐き気止めを飲んで
できる限りの備えをして出発。





真夜中のドライブがはじまる。


夜でも暑くジメジメとしたペシャワール。
バスの窓を全開にして、
砂埃や排気ガスを含んだむわっとした風を浴びながら
ペシャワールの街を進んでゆく。


一度休憩をとった後
しばらく進むとクネクネとした山道へと差し掛かり
そこから風もどんどん変わっていった。
揺れもだんだんと激しくなってくる。


前の席に座っていたローカルの若者が
突然窓の外に向かって吐いた。
現地の人でも酔うのか…
まだ出発して3時間ほどしか経っていないが
酔ってしまっていてかわいそう。

私は幸いにも、万全の準備の甲斐あってか体はなんともなかった。


バスはどんどん山道を登り、標高を上げてゆく。
窓を開けていると、ひんやり寒さを感じるほどに。
外はすっかり真っ暗なのだけど空気が澄んでいるせいか
颯爽と連なる山が遠目に見える。
窓越しから見上げる空には満天の星。
時には断崖絶壁の崖の間を進んでゆく。
時折すれ違うデコトラは夜仕様で、
ライトもカラフルに光を放っている。

そして山道を右へ左へ、そして前後に揺られ
時にはお尻が座席から飛び上がったりしながら進む。


この車に乗っていたのはみんなチトラール人のようで
車内にはチトラールの心地よい音楽が流れていた。
選曲はどれもその場所の雰囲気にぴったり合っていた。


チトラールに至るまでは、検問が10箇所近くあった。
検問ごとにバスを降りてポリスに訪問の目的を聞かれたり
ノートにツーリスト情報を記入したり
その度に時間がかかってしまう。
バス会社が外国人を乗せたくない理由がわかる気がした。

だけど、一緒にバスに乗っていたチトラーリー男たちは
私たち外国人のせいでたくさん待たされているというのに
嫌な顔ひとつせず文句ひとつ言わず、温かく接してくれた。


真夜中の真っ暗な中でのドライブだったけど
うっすらと見える景色をぼんやりと眺めて
現地の音楽を聴き風と香りを感じ
ローカルパキスタン人と共にバスに揺られて過ごしているのが
ものすごく幸せなことに思えてきた。

みんなあったかくて優しくて
なぜかじーんと涙がこみ上げてくる。



そして、やっぱり私、
パキスタンが本当に好きなんだなって再確認する。
パキスタン人を愛しまくっている。



普通だったら12時間のバス移動なんて苦痛に感じそうなのに
なんだか今回はあっという間だった。





朝の8時ころ、チトラールに無事に到着。
着くやいなやすぐにバスの人に連れられ
ポリスのレジストレーションオフィスへ。

ここチトラールやその先にあるカラーシャ谷に滞在する外国人には
必ずセキュリティ・ポリスをつけることになっているらしい。
チトラールに滞在中は、ホテルの外に出るときはポリスが同行することになる。
カラーシャへ行くときには、宿泊代も払うようになるとのこと。


チトラールでは、これまでに私が訪れた
パキスタンの他のどの場所と比べても
英語を話せる人が少ないように感じた。
ペシャワールからのバス内で英語を話せたのは一人だけだったし
私たちの警護につくポリスも、英語は通じない。

ジェスチャーや、乏しいウルドゥー語を最大限に活用して
コミュニケーションをとるしかなさそうだ。


でも、ここに住む人たちは、私たちを魅了した。
西洋と東洋の血が混ざり合い
本当に綺麗な顔立ちの人ばかり。
そして他のパキ人よりはどこかシャイで控えめで
なんだか私たち日本人とよく似ている気がする。





チトラールは、都会を抜けてきた私たちには
オアシスのように感じる場所だった。

3日ぶりにシャワーを浴びてスッキリできた。
食事はみな胃に優しくて美味しい。
大きすぎず小さすぎず、ちょうどいい街の規模。
温かく、なんだか居心地のいい人々の距離感。
気候も、
酷暑のピンディーやペシャワールを抜けてきた私たちには
暑すぎなくてちょうど良い。
空気は乾燥していて、ベタベタとした嫌な感じがない。




宿も最高で、沈没条件は揃っている。
長居をしてしまいそうな予感がする。






Y.

2017.8.16
Chitral PAKISTAN





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