2019-11-16

千の輝く太陽






さして集中力のない私が
1日や2日で本を一冊読み上げるというのは、
稀なことな気がする。






「君のためなら千回でも」という、
アフガニスタンを舞台にした映画を観た後に、
この原作を書いたカーブル生まれのアフガニスタン人、
カーレド・ホッセイニの別の著書「千の輝く太陽」
という物語が無性に読んでみたくなった。
思い立ったら行動は早い。すぐに、図書館に向かう。






初めから終わりまで、ページをめくる手が止められず、
食べることも寝ることも、トイレに行くことも一時忘れて
物語に釘付けになった。



屋根また屋根に揺れる月を誰が数えられよう
塀また塀に隠れる千の輝く太陽を誰が数えられよう


アフガニスタンの混乱の時代に翻弄されつつも、
力強く生き抜く女性たちに勇気を与えられること以上に、
あまりに悲惨で、冷酷で、これでもかというほどに不平等な世界を前に
打ちひしがれ、深い悲しみが心に広がってゆく、そんな物語だった。


けれど、現実にアフガニスタンでは、
こういう話はきっと至るところで起きている、のだろう。
現実には、マリアムやライラのような女性が、
ラシードのような男が、いくらでも存在するのだろう。
もっともっと、残酷な現実だって、あるのかも知れない。


それでも、したたかに、高潔に生き抜く主人公の、
圧倒的な平和と安心の感覚に包まれた、
達観した境地に辿り着く最期には、
幸せの概念を変えてくれるような、救われたような思いがする。


重い話なのに、読み終えた時、
不思議と心が澄み切ったような感覚が残った。


悲しいけれど心温まる、残酷なのに愛に溢れている。
この本を読まずして、現実を知らずして死ななくてよかった、と思える本だった。




舞台は1960年から2000年代のアフガニスタン。
望まれぬ子として生まれたマリアムは、粗末な小屋で母と暮らしている。
父は土産を持って毎週娘を訪れるが、兄弟達に会わせることも、
経営する映画館に連れて行くこともしない。
ある日、マリアムは父の屋敷を突然訪れ、その扉を叩いた。
それが、悲劇の初まりになるとも知らずに・・
そして彼女の人生は闇に包まれる。
二十年後、聡明な少女ライラとの間に、美しい心の絆が生まれるまで・・

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