2018-12-27

チトラールの治安と護衛制度について【パキスタン】


パキスタンの旅情報をまとめています。
愛してやまないパキスタン。
そのパキスタンの中でも、私が一番居心地がいいと感じたチトラール地方についてまとめていきます。
このエリア、パキスタンの中でも旅行者はかなり少ない地域なので、記事を書いたところでどれだけ需要があるのかわかりませんが・・・
私は大好きな場所だし、この地域を訪れる人が増えて欲しいので、じっくり何編かに分けて書いて行ければなと。
まずは、パキスタンやチトラールの治安とセキュリティポリス制度についてお話しします。



チトラールの治安状況について

外務省の海外安全ホームページの情報を見ると・・・



【引用:外務省 海外安全ホームページ
危険レベル
レベル1(白)十分注意してください。→パキスタンでは現在のところ該当地域なし。
レベル2(黄)不要不急の渡航は止めてください。
レベル3(橙)渡航は止めてください。(渡航中止勧告)。
レベル4(赤)退避してください。渡航は止めてください。(退避勧告)
こちらは、パキスタン全土の危険レベルを示した地図になります。
これによると、チトラール地区一帯は『レベル3』または『レベル4』の地域ということになります。外務省的には渡航を推奨していないようですね・・・

パキスタン全体のテロや誘拐の発生状況は?

「パキスタン」と聞くときっと多くの人が思い浮かべるのはきっと、『テロ』や『誘拐事件』など・・・マイナスのイメージを持たれる方が多いのではないでしょうか?テレビで報道されるニュースのほとんどが、そういう物騒な内容ばかりなので、無理もないと思います。
気になる実際のテロの発生状況ですが・・・近年は減少傾向にあるようです。治安当局、政府機関、宗教関係施設、欧米人が多く集まる場所などへのテロ・襲撃事案は引き続き複数発生しているようですが、以前ほどテロが頻発している状況ではなく、ピークだった2009年と比較すると、2017年は約7分の1にまで減少しています。
それに、2017年に起きたテロや誘拐の多くは『バロチスタン州』や『連邦直轄部族地域』での発生が大半を占めており、イスラマバードやラホール、ペシャワールやカラチなど大都市では年に数回ほど起きているという状況のようです。
と、パキスタンの治安は改善傾向にあるようなので、これから渡航を考えている方は、チャンスかもしれません。
このまま状況がよくなって行くことを願うばかりです。

チトラールは安全?


チトラールの属するKPKは、バロチスタン州と連邦直轄部族地域に続いてテロ事件の多いエリアではありますが・・・実際は事件は南部地域に集中しているので、KPKの最北部に位置するチトラール地区では、もう何年も大きな事件は起きていないようです。
チトラールはアフガニスタンと国境を接しているわりには、ヒンドゥークシュの山々に囲まれていて入り込みづらいせいか、あまり興味がなかったせいか、長いこと大きなテロ活動がはなく眠ったような地域だったようです。
ただ、パキスタン全体で治安が悪化していた約10年前、チトラール地区内でもテロ事件は発生したことがあります。カラーシャ谷にてローカルと外国人の誘拐事件が数件発生しています。また、チトラール地区最南部のドローシュから近い、ディール地区では100人以上のタリバンがチェックポストを襲い、兵士や警官が殺されるという事件が実際に起きています。

なので「絶対に大丈夫」「安全」とは言い切れませんし、あくまで「自己責任で」と言うしかないのですが・・・それはパキスタンでも他のアジアの国でもヨーロッパでも同じこと。日本にいたって、なんらかの事件に巻き込まれる可能性はゼロではありません。


本当に絶対安全な場所なんて世界のどこにもないと思います。そういう意味では、パキスタンに限って特別危険視する必要もないかなと。


ちなみにチトラール地区のアフガニスタン国境に近い一部のエリアには、地元人以外は入域許可証(NOC)なしには入ることができません。ですが、そうした地域を除けば、警察や地元の人々も「今のチトラールは安全だよ」と言います。
セキュリティが強化された現在は、至って平穏な地域とも言っていいと思います。

チトラールの護衛(セキュリティポリス)に関して

チトラールでは、外国人は滞在登録と護衛が必要。

チトラールの町に到着したら、外国人はチトラール警察署内にあるForeigner Registration Officeに行き、外国人滞在登録を済ませなければなりません。
(飛行機で行く場合はチトラール空港内のオフィスで滞在登録が可能です。)
陸路で到着した場合は、到着したバス停の近くにいる人や、バスのドライバーが連れて行ってくれるか、宿にチェックインした後に自分で行くことになります。
滞在登録をしなくてもチトラールの町くらいは歩ける場合もありますが、警察に見つかるとオフィスに連れて行かれます。また、滞在登録をしていないとカラーシャ谷など他の町や村に行くことは出来ません。
オフィスでは、チトラール警察のオフィス担当ヘッドポリスが「Welcome to Chitral!!」と笑顔で迎えてくれます。
そこでパスポートとビザのコピーを1枚ずつ渡し、登録カードに必要事項を記入します。
<滞在登録カードの記入事項(英語で記載)>
名前・パスポート番号・ビザNo・生年月日・職業・滞在目的・国籍・どこから来たか・次の目的地はどこか・いつまでチトラール地区に滞在するか・宿泊施設、などなど。
そして、その場でチトラールで護衛をしてくれるセキュリティポリスを紹介され、チトラールに滞在中は行動を共にすることになります。ちなみに護衛料などはかかりません。
マシンガンを持ったチトラールポリス。

髭面の強面なポリスもたまにいますが、みんなフレンドリーで責任感があって、ジェントルマンです!

なぜ護衛が必要なのか

チトラールの町の人々も、外国人滞在登録オフィスのヘッドポリスでさえも、「チトラールは安全なところだから、全く心配することはないよ」と言います。
それならどうして護衛が必要なの? とオフィスのヘッドポリスに聞いてみると、
上官の意向で、決まりだから仕方ないんだ。ポリスが君の旅を全面的にサポートするから、ガイドとして使ってくれていいし、困ったことがあったらなんでも頼っていいよ。
と、言っていました。
どうやらチトラールでは上官の強い意向で、これまで外国人旅行者を守るために護衛制度が続いて来たようです。国境に近いエリアですし、事件が起きないように念には念を入れて、と言うことだったのではないかと思います。
正直、ペシャワールやラホール・カラチなど都市にいるときの方がよっぽど気を張って町歩きしてましたし、セキュリティいたらいいなって思うこともありました。
私はチトラールへは4度行き、それぞれ2週間近く滞在していましたが、至って平和で人々も優しく控えめで親切ですし、危険を感じるような出来事はありませんでした。護衛がつく理由に関しては、『入域制限エリアに勝手に外国人が入らないようにする、監視の目的もある』という話もチラリと聞きました。

護衛と行動を共にするにあたってのアドバイスや注意事項

どこまで一緒に行動するのか

基本的にセキュリティポリスは、宿の部屋以外には常に同行すると思っていていいと思います。ルール的には、たとえ宿の近くの売店に水一本買いに行くだけでもポリスが同行しなければならないということになっています。(実際はその程度なら容認してくれるポリスがほとんどですが)
どこまで一緒に行動するかは、場所によっても少しずつ違って来ます。

チトラール市内やマスツージの場合

市内に滞在中は、チトラール警察署(またはマスツージ警察署)に所属のポリスが護衛として付きます。彼らは警察署内に部屋があるので、私たちを宿まで送り届けたら自分の部屋に帰ります。
もし来てもらいたい(外出したい)時は、あらかじめ聞いておいたポリスの電話番号に電話またはメッセージを送ります。パキスタンで使える携帯やSIMカードを持っていない場合は、宿の電話を借りるか宿のスタッフに電話をかけてもらいます。

それ以外の場所の場合

基本的には宿も含めて常に行動を共にします。ポリスは夜になっても家に帰りません。
男性の場合は宿は基本、同室でも構いませんが、女性の私はそれは嫌なので、基本部屋は分けてもらいます。(一度だけ、他にポリスが寝る場所がなく同室になってしまったことがありましたが。しかし彼らは任務中でもありますし、手出しはして来ませんのでご安心を。)
追記
女一人旅の私は以上のようなパターンで行動していましたが、どうやら男性の場合は、交渉次第ではチトラールの街中くらいはポリスなしで自由に歩かせてもらえる場合もあるようです◎
滞在登録オフィスのヘッドポリスは旅行者の意見を聞き入れてくれる人なので、色々と交渉をしてみる価値はあると思います。

ポリスの移動や宿費用はどうするか

護衛料はかからないと書きましたが・・・チトラールの町から外に出た時のポリスの移動や宿、食費に関しては、旅行者によって様々なようです。
移動も宿も食費も全て負担している旅行者もいれば、一銭も払っていない旅行者もいました。
滞在登録オフィスのヘッドポリスは「旅行者に支払いの義務はない」と言っていますが、どうやら明確なルールはないようで・・・護衛につくポリスによっては普通に移動費や食費、宿代まで請求してくる人もいます。ポリスも人によります。
ポリスは出張費用をもらっているとかもらっていないとか、いろいろな話を聞くので実際はどうなのかよくわかりません。
私の場合は、時と場合にもよりますが、チトラールの町から外に出ているときは、基本的には移動費と食費はポリスの分も負担していました。宿に関しては、空いてる部屋やレセプションで寝てもらうことが多かったのでほとんど負担していませんでした。
でも、ポリスが交渉してくれるおかげで色々安くなったり、ポリスの友人や警察署内でご飯をいただくことも多かったりするので、実際には出費はそんなに増えていないかもしれません。
ちゃんとしたルールがないので戸惑いますが、自分が気持ち良いと思う対応をするのが一番だと思います。
出費が気になる人や、はっきりさせておきたい人は、オフィスでヘッドポリスと、護衛のいる前で『支払い義務はない』ということをしっかり確認しておけば良いと思います。

ポリスとのコミュニケーション

チトラールは、パキスタンの他の地域と比べると、英語を話せる人が少ないように思います。
町には英語を話す人もたくさんいるのですが、護衛として私たち外国人についてくれるポリスは、英語でのコミュニケーションが難しい場合が多いです。英語が話せるポリスに当たったらラッキーです♪
それでも、ポリスたちは外国人の護衛に慣れているので簡単な英語(挨拶とか、旅行でよく使うワード)はわかってくれます。身振り手振りや、グーグルの翻訳アプリなどを活用して、ぜひコミュニケーションをとってみてください。
旅の指差し会話帳に載っているような簡単なウルドゥー語を少し勉強しているだけでも、コミュニケーションの幅がグッと広がります♪

どうしてもポリスと相性が悪い場合

私はこれまで4度チトラールを訪問し、エリア全体で15人ほどのポリスにお世話になりましたが・・・1人だけ、どうしても苦手なポリスがいました。
ポリスとは、宿にいるとき以外、基本いつも行動を共にするので、相性が悪いとしんどいです。短期滞在ならまだいいのですが、滞在期間が長くなればなおのこと・・・
そのときは私は、滞在登録オフィスの警察にお願いしてポリスを変えてもらいました。オフィスのスタッフは、出来る限り旅行者が快適にチトラールの旅を楽しめるように、私たちの意向を聞いてくれます。
なので、どうしてもダメだと思ったら、ポリスを変えてもらうのも手です。ポリスを理由に滞在期間を短くしてしまったり、チトラールのイメージが悪くなってしまうのは本当にもったいないから・・・

護衛(セキュリティポリス)制度は、近々なくなる可能性がある!

ここまで護衛制度について色々とお話してきたのですが、実はこの制度、近々廃止される可能性があるようです!バックパッカーにとっては朗報ですね!
護衛制度はデメリット以外にメリットもたくさんありますが、やっぱり自由に歩けないのは不便ですし、ローカルとの交流もしづらくなります(ホームステイ不可ですし)。護衛制度があるがために外国人旅行者も以前のように増えてはいきません。
チトラールの観光業や宿泊業を営む人たちは、この制度の廃止を以前から熱望していたようで、度々Security Agencyや政府機関に制度廃止の要望を出していたようです。
2018年11月に滞在した際に、町の多くの住民が、
「インシャアッラー、もしかしたら近々護衛制度がなくなるかもしれないよー!」
と言っていました。
そうなると、これまで以上にチトラールは旅人にとって過ごしやすいオアシスのような場所になりそうですね。ぜひ、期待したいところです。
護衛制度の廃止の情報が入り次第、こちらのサイトで発信します!



以上、チトラールの治安や護衛(セキュリティポリス)制度について書いて来ました。
レベル3やレベル4の地域であること、護衛がつくことなど・・・
チトラールは危険でハードルの高い地域と思われがちですが、実際に行ってみると、拍子抜けしてしまうくらい穏やかで平和に過ごせる場所です。
外国人旅行者はちらほら見かけますし、日本人の個人旅行者にも毎回何人か会います。

何が言いたいかと言うと、レベル3やレベル4の地域ではあっても
実際には現地には旅行者も少なからず居ると言うこと。
多少の制約はあるけれど、十分に個人旅行が可能な場所であると言うこと。


本当に魅力の多い地域なので、最新の治安情報を入手した上で、機会があればぜひ行ってみてください♪


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