「ソンクル湖に行けば、実際に遊牧民の暮らすユルトに泊まれるよ」
南旅館でそんな話を耳にした。
遊牧民の暮らしをこの目で見ること、肌で体験することは
長年の夢の一つだった。
これは、行ってみるしかない。
すぐにソンクル湖行きを決め
話を聞いた翌日の朝早くに宿を出発した。
【ビシュケクからコチクル村へ】
ソンクル湖の拠点となるコチクルという村に移動する。
着いたらここのCBT(キルギスの旅行会社)に行き
ソンクル湖へ行くタクシーを手配してもらった。
一人だととても高くなってしまうけど
ちょうど同じタイミングでソンクル湖に行きたいイタリアのカップルがいたので
タクシーをシェアして向かうことに。
【ソンクル湖を目指す】
ソンクル湖は標高3016mに位置し4000m級の山々に囲まれた高山地帯にある。
ソンクル湖に向かうまでの道も、山々の景観が素晴らしかった。
ソンクル湖へ向けて道路を走っていると
馬に乗った遊牧民と、その家畜たちに遭遇。
車が来ると家畜たちはさささっと端によける。
草原を、馬と家畜たちと颯爽と進んでゆく遊牧民は
ものすごくかっこよく見えた。
そしてコチクルを出発してから3時間、
ついにソンクル湖畔にある遊牧民のユルトに到着。
ソンクル湖畔では、シーズン中は遊牧民がたくさん暮らしていて
一つの家族ごとにユルトが数件ずつ立っている。
その中のいくつかのユルトをツーリスト用として
外国人が宿泊できるようにしているようだった。
【遊牧民とはどういう人たちなのか】
受け入れをしてくれた家族 |
住む場所を一年間を通じて何度か移動しながら
主に牧畜を行って生活する人々のことをいう。
家族又は家族の集まりで家畜の群れを率いて、
家畜が牧草地の草を食べ尽くさないように、その回復を待ちながら、
定期的に別の場所へと移動を行う暮らしをしているようだ。
移動はあてもなくしているわけではなくて
基本的にそれぞれ固有の夏営地、冬営地などの
定期的に訪れる占有的牧地をもっていて、
季節の変化や牧畜の状況に合わせながら
ほとんど定まったルートを巡回して暮らしているらしい。
遊牧民というと、私が最初に持っていたイメージだと
完全に自給自足で暮らしている人々なのかと思っていたのだけど
どうやらそういうわけでもないらしい。
彼らの生活ではミルク、毛布、肉などは手に入るけれど
穀物や野菜、そのほか定住に必要な工芸品などの入手は
彼らの生活だけでは困難。
そのために、移動性を生かして近隣の農耕民から穀物を買ったり
キャラバンのように商隊を組んで交易品の運搬をになったり。
彼らは特に冬の間は家畜や家畜のミルクやチーズ、ヨーグルトを売ったりしてお金を稼ぐ。
そして女性たちは羊の毛を使って手織りで絨毯を織って売る。
ーというのは、伝統的な遊牧民の暮らし。
実際にここの人たちが冬の間どこでどうやって暮らしているのかは
たった1日の宿泊で知ることは出来なかった。
聞きたいことは山ほどあるけどロシア語もキルギス語もわからないし
英語はほとんど伝わらないので、詳しい話を聞くことは難しい。
彼らの暮らしを本当の意味で知るには
年間通して密着して暮らしてみる必要があるだろう。
湖畔で草を食べる家畜たち。 |
馬に乗って草原を駆け抜ける遊牧民。 |
ユルトに着くやいなや、家族が豪華なおやつで歓迎してくれた。
生のフルーツやドライフルーツ、
チョコレートやお菓子の山に一瞬目が眩んだ。
だけど、よく考えるとここで出てきたものは、
ここでの暮らしだけでは手に入らないであろう食べ物ばかり。
たくさんツーリストが入り、観光地化され
純粋な遊牧民の暮らしを体験できないのは少し残念でもあった。
:
私が泊まったのは、こんなユルト。
ユルトは、遊牧民の生活に合わせて考えられた移動式の住居のこと。
中心部には2本の柱があり、屋根の部分が支えられていた。
ユルトの骨組みは木の棒が細かく組み合わされてできていて
その周りを羊の毛でできたフェルトのような布で覆われている。
寒さの厳しい場所であってもそれをしのげるようにできていて
遊牧民の知恵がいっぱいに詰まった住居であることが分かる。
天井は、こんな模様になっている。
円の中で2組の3本線を交差させたこのシンボルは、キルギスの国旗にも使われている。
住居の要となる部分であり、祖国や宇宙を象徴しているらしい。
キルギスの国旗 |
ちなみにトイレはここ。
外は0℃あるかないかの体感気温であまりにも寒かったため
調理をしている小屋に逃げ込ませてもらい、食事の準備を手伝った。
この日の夕食は、ラグマン。
そして、ロールキャベツ風のおかず。
とても美味しかった。
食事を終えるとあたりはもう暗くなっていた。
夜。
灯のない湖畔で見る星空はまた、格別に綺麗だった。
温かい羊の毛で覆われたユルトでも
さすがに気温0℃を下回るような場所で過ごす夜はやはり寒かった。
持っている服を何枚重ねにもして毛布にぐるぐるにくるまって眠りについた。
:
たった1日。本当の意味で遊牧民の暮らしを知れた訳ではなかったけれど
遊牧民の近くでユルトに泊まれただけでも私には大きな収穫だった。
しかし、こんな厳しい環境の中で自分たちの力だけで生きている遊牧民とは
なんと力強いのだろう、とつづづく思う。
生活に最低限必要なものだけを持って
昔からの知恵を使ってシンプルに賢く生きてゆく。
昔からずっとそのスタイルを貫いてきた彼らの暮らしを
次はもっともっと長いスパンで見てみたいと思った。
【ビシュケクからソンクル湖への行き方】
①ビシュケク西バスターミナルから「ナリン」行きマルシュルートカに乗車。
■料金:300ソム■所要:3時間(小休憩あり)
②コチクル又はサリブラックで下車。
(1)コチクルで下車する場合
コチクルのCBTに手配してもらいタクシーでソンクル湖へ。■料金:一人でタクシーチャーターする場合。
移動(往復)4000ソム+自分とドライバーの宿食事代2100ソム=6100ソム(車一台)
■所要:3時間
(2)サリブラックで下車する場合
分岐の手前でソンクル湖へ向かう車をヒッチハイク。■料金:南旅館に泊まっていた人によると相場が500ソム。
※帰りは、他のツアー客などの車に乗せてもらえないかお願いする。
*(1)は、シェアできる人がいれば良いが、一人だと割高。
私は(2)で行きたかったけど、シーズン終わりに近づいていると聞いていて
ヒッチハイクできるのか心配だった為、確実なCBTにお願いすることにした。
(私はたまたま同じタイミングでCBTに来ていた欧米人カップルとシェアしました)
※実際はソンクル湖へ行く途中車は何台も走っていたので、ヒッチハイクも可能だったと思います。
Y.
2017.09.10
Song Kol KYRGYZSTAN
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