2017-08-13

アジュラックを訪ねて【パキスタン・シンド州ハイダラバード】

今日は、カラチの東180kmにある、
イスラム支配以前からの古い街、ハイダラバードへ。


カラチからハイダラバードへは、バスで3〜4時間ほど。
朝の8時頃に出発し、到着したのはお昼前。
ガタガタの道が続いて酔ってしまい、少しハードな移動だった。






ハイダラバードは、夏は猛暑で知られる街。
5月、6月の酷暑期には、最高気温50℃を超えるとか…
お風呂よりも暑いって、どういう世界なのだろう…

今は8月なので酷暑期ではないけれど、
それでも40℃の世界であろうことは覚悟をしていた。

しかし、実際到着してみると、
体感は日本の夏と同じくらいかな、という感じ。
あとあと現地の人に聞いてみると、
「今日はたまたま過ごしやすい気候なんだよ」とのことだった。
ちょうどいいタイミングで来れたようだ。



この街に関する情報は、
地球の歩き方にもたった半ページしか載っておらず、情報はないに等しい。
観光客はほぼ皆無なこの場所になぜ来たのかというと、


アジュラックの工房を訪問したかったから。
本当に、それだけの為にこの街までやって来たのだった。


宿は、Booking.comで検索してみると、
ハイダラバードで3件ヒットした。
その中で一番安かった宿にまずは向かってみたのだが、
あいにく「フル」と言われてしまい、近くの宿を紹介された。


一泊4000ルピーと高額だったのだけれど、
部屋はかなり快適そうだったのと、
もともとカラチとハイダラバードで外国人の泊まれる安宿がないことは承知していて
想定の範囲内だったので宿泊を決めた。

ただ、これをずっと続けていたのでは
あっという間にお金がなくなり強制帰国になってしまう。
これからはなるべく節約していかないと…



部屋に入ってしばらくすると、警察がやって来て
“あなたの目的は何ですか?”と日本語で表示された
スマートフォンのグーグル翻訳アプリを見せて来た。


「アジュラックの工房に行きたい。
どういう工程で作られるのか、知りたいです。」
と英語で返すと、
“何だ、英語喋れるんだ”といった感じで
それからアジュラックのことについて色々教えてくれた。


どうやらハイダラバードでは、
外国人が来たら宿の人は警察に連絡するようになっているらしく
外国人は無料で護衛の警察をつけられるようだった。
何でも、外国人が一人で出歩くのは安全ではないかららしい。
護衛は強制ではなく、YesかNoか自分で選ぶことができ、書類にサインする。

私は、Yesにサインをした。

外出する時に常に銃を持った警察がついて回るなんて…
と最初は思ったのだけれど、
護衛警察のアミールが人柄がよく信頼できそうだったのと
英語がペラペラで、ホテルの人との通訳をしてくれたことと、
そして何より地元民なので周辺のことに詳しく
単純にガイドになってくれそうだったから。笑

私は、カラチからフライトがある関係で
ハイダラバードは1泊しかできず、明日の昼前には出発したい。
と考えると、動けるのは今日の午後のみ!
限られた時間で工房訪ねるには、彼はもってこいの助っ人だった。



というわけで、護衛ポリスのアミールと共に
アジュラックを巡る半日のスタート!





伝統的なアジュラックは、ブロックプリントという方法で作られる。
模様の描かれた木版を押して行き、文様を作っていく方法なのだが
こちらは大変な手間のかかる方法で、
この手法を行なっている工房は、近辺の村に行かないとないとのこと。
今回はあまり時間がなかったため、そちらの方は泣く泣く諦め
ハイダラバードの街中でスクリーンを使った孔版画のような技法で
アジュラック布を作っているという工房を訪ねることにした。


アミールは、工房の職人さんに電話をして
見学の手はずを整え、リクシャーでその工房まで連れて行ってくれた。


工房があるのは、ハイダラバードの手工芸工場の集まっている地区。




一枚のアジュラック布が仕上がるまでには
大きく分けてデザイン、下絵付け、染色、防染、乾燥
という工程があるようで、
それぞれの工程を別々の工房で行い
最終的に仕上がったものが商人の元へ行く
という流れがあるとのこと。


その中で、今回訪問させてもらったのは、
アジュラックの下絵付けと染めの工房。




服と手が茜色に染まった職人さんたちが笑顔で迎えてくれていた。


ここでは、デザインの描かれたスクリーンを使い
下絵をつけていく。




これは、デザインの描かれたスクリーンを用いて
下絵付けをしているようす。


その都度スクリーンを変えて
色をどんどん重ねてゆく。



スクリーンを使った下絵付けが終わると、この状態に。


それから、さらに染色液に布をつけ、色を定着させると


最終的にこのような状態になる。



最後に、職人さんたちの集合写真を。


突然の訪問にもかかわらず、作業を中断して
染めの方法を見せてくれた職人さんたちに感謝。





今回見学させてもらった工房は、
新しい方法でアジュラックを作っている場所だった。
スクリーンを使い、化学染料でより強固に色を染めることができる。
古来からの伝統的なアジュラックは
ブロックプリントの方法で下絵付けがされ
染めは天然染料を使う。

スクリーンを使った新しい手法はとても効率的だし
やっぱり仕上がりもとても綺麗。
だけど、やっぱり昔からのブロックプリントは
天然染料で生み出される優しい色合いがとても素敵だし
ブロックプリントならではの味が出ていてとても美しいと思う。


ブロックプリントの工房はシンド州でも
小さな村のほんの一部で続いているのみで
それはどんどんと衰退の一途にある。。。
きっと、このまま誰も何もしなければ
近い将来、この伝統は失われていってしまうのだろう。



時間がなかったためにこの小さな村への訪問は諦めてしまったのだけど
今になってみて、フライトをキャンセルしてでも
行っておけばよかったと、少し後悔をしている。
(今リアルタイムでは、ラーワルピンディーにいる)


でも、これでまた3度目にパキスタンを訪問する理由ができた。


パキスタンには様々な地域があって環境が違えば
様々な言語、さまざまな民族、それぞれの文化がある。
何度訪れても、見尽くしてしまうことのできない
魅力がたっぷり詰まった国だと思う。





アジュラック工房を訪問した後は、



アミールのおすすめにより、
SINDH MUSEUMというシンド州伝統工芸の博物館へ行った。


ここの博物館が、なかなかよかった。


こちらは、シンド州のさまざまな伝統工芸の
職人さんたちのようすを表現した人形の展示コーナー。

かご編み


機織り


木工


ミラーワーク刺繍


もちろん、アジュラックのコーナーも。


様々な植物から染料を作る人。


木版を押し、模様をつけてゆく人。

色を定着させる作業をする人。

そして、商人の元へ。


他には、伝統工芸品の数々の展示コーナー。




ここ、民族・民芸好きには、たまらない場所。

期待せずに行ったシンドミュージアムだったけど
なかなか楽しめました◎


アミールのおかげで、短い時間で見たかった場所を
しっかり回ることができた。彼には本当に感謝。

警護ポリスのアミールと、博物館員さん。







ハイダラバードは、古くからの歴史のあるまち。
イスラムの旧市街を思わせる建物が多く
活気のあるバザールなど、見どころの多い街だと思う。




実際行ったことはないけれど、
写真で見る限り、インドのグジャラートやラジャスタンの街並みに
近いのではないかと思う。

さらに、近隣のBitsha村などへ行くと、
さらに趣ある建物やブロックプリントの工房なども見ることができるとのこと。



カラチと比較してとてもシャンティな雰囲気漂うまちで
次訪問することがあれば、ぜひ長期滞在したいと思う街だった。




Y.

2017.8.10
Hyderabad PAKISTAN





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